京都料理芽生会のあゆみ
京都料理芽生会のあゆみ
京都料理芽生会は1955(昭和30)年、日本料理の発展と、伝統と格式のある京都の食文化を次世代へ継承するために発足しました。以来、料理人たちが研鑽・研究をはかり、伝統を守りながら、未来へ向けた挑戦を積極的に行っています。こちらでは、これまでの活動の歴史を糧に、本物の料理の追及、新たな料理への挑戦を続けている同会の歩みを振り返ります。
芽生会の創立
昭和初期、料理屋の若手経営者が集まり、新しい料理を研究していく「芽生会」が東京で結成され、その波は全国へと広がっていきました。京都においては、故辻重光(二軒茶屋中村楼)がまとめ役となって、1955(昭和30)年7月、京都料理芽生会が誕生。初代会長に北村多造(いもぼう平野家本家)が就任しました。
「料理技術の向上」が第一の目的
同会は、「料理技術の向上」を第一の目的として掲げ、発足後10年間は新たな入会者を認めず、京都の料理屋の重鎮を講師として招き勉強会を重ねるなど、その目的に向かって邁進しました。1959(昭和34)年、大阪、兵庫の芽生会と三都芽生会を開催、67年には全国芽生会連合会京都大会を招致し他地区の芽生会と連携を深めました。70年には創立15周年記念式典を開催し、式典当日は、料理界だけではなく一般招待客も参加、伝統料理に真摯に取り組む同会の活動姿勢をアピールしました。
京野菜の復活 「復活させよう 京の伝統野菜」
髙橋英一(瓢亭)が第5代の会長を務めた80年代後半、市場で京野菜があまり見られなくなっていることに着目し調査を開始したところ、数軒の農家により細々と作られている状況と、農業総合研究所(京都府亀岡市)で種子保存のためだけに栽培されているのを目の当たりにしました。そこで、京料理の基礎となる地元産の野菜について知るため、野菜消費の実態調査を実施、1986(昭和61)年からは「復活させよう京の伝統野菜」をスローガンにシンポジウムを企画しました。
反響を呼び、参加者は農業専門家や食に精通した作家などをはじめ、広く一般市民にまで周知されました。1991(平成3)年には、一連の京野菜復活活動の集大成として、多彩な料理方法を解説した『京野菜と料理』(淡交社)を刊行。京野菜復活へのこの取り組みは、対外事業推進のための委員会制度の整備につながり、同会の組織力と結束力をより強固なものにするとともに、その後の京都料理芽生会のさまざまな対外事業実施の礎となりました。
多彩な対外事業 活動の広がりは全国へ
1995(平成7)年、阪神淡路大震災が発生した際、同会は義援金を送付。翌年8月には、先斗町歌舞練場において、「京料理における革新と伝統の調和」をテーマに創立40周年記念事業「ビアフェスタ」を実施し、好評を博しました。その後、2000(平成12)年に、創立45周年記念事業「21世紀コトはじめ茶会」を長楽館(京都市東山区)で開催。02年3月には大和学園の協力を得て、一般市民を対象に「日本料理フォーラム」を初開催するなど立て続けに事業を展開していった。
その後も2003年4月から毎月開催した東京・京都館での東京料理講習会や、04年1月から3年間行った、日本航空のビジネス・ファーストクラスの機内食の監修など、同会の活動は、京都に留まらない全国的な広がりをみせていきました。
このような対外的な活動は、会員各自が積極的に研鑚を積むことにつながり、なかでも日本航空の機内食監修にあたっては、制約のある機内食をめぐって活発な意見交換、料理論議が行われたことで、会員店の料理人たちの成長を促していったいえます。
食育事業など多方面に展開
2007(平成17)年1月には、京都市教育委員会の中学生対象の学習施設「ファイナンスパーク」にブースを出展、8月には、京都料理学校で親子料理教室を行いました。09年10月には、他県の調理師学校の協力のもと、チャリティフォーラムを行い、収益金を日本ユニセフ協会へ寄付。10年に迎えた創立55周年では、全国芽生会連合会京都大会を招致し、関係者含め多くの参加者が集うなか平安神宮において薪能を開催。また、同年12月の、みやこめっせでの京料理展示大会では、京都造形芸術大学(現京都芸術大学)の学生とともに、器と料理のコラボレーションを実施するなどその活動の幅を広げていきました。
2011(平成21)年3月11日に発生した東日本大震災においては、阪神淡路大震災発生時と同様、義援金を送付するため、同年9月に長崎で、翌年5月に青森県八戸、そして地元京都で「絆プロジェクト」を実施。13年8月からは、「京の食文化ミュージアム・あじわい館」において料理教室を、同年10月には、「日本料理文化博覧会和食の未来に向けて」をホテル椿山荘東京で開催し、その後のユネスコ無形文化遺産登録(2015年12月)に向けて、確かな足掛かりとしました。
海外発信への足掛かり
2015(平成25)年には創立60周年記念事業「精進料理の世界へ」を企画。2年にわたり京都の8寺院の協力のもと、新しい精進料理の研究と開発を進めました。各寺社の思想哲学を学び、典座教訓や赴粥飯法を基本としながらも、京野菜を主な素材として、昆布・大豆・椎茸・胡麻などの乾物や味噌・醤油・みりんなどの調味料の良さを生かすことで、若い人からお年寄りまで、あるいはビーガンやベジタリアンのほか、信仰する宗教の異なる外国の方々でも、安心して食すことのできる料理の創出を目指しました。この事業は、この後訪れる、インバウンド需要を見越した先見性のあった取り組みであったといえます。
「食」は「文化」に
2018年頃からは、「食」を文化的側面から捉えた活動を活発化。2017年に文化芸術振興基本法が改正され、生活文化の中に、茶道、華道、書道と並んで「食文化」が明記された(文化芸術基本法、第12条)ことを受け、同会では法制化1周年記念事業「文化としての食を考える」を開催。その翌年には、京都祇園花街「お茶屋と京料理・食文化にふれる」を開催し、食がさまざまな文化との結びつきをもって発展してきたことをPRする事業を展開。また、「復活させよう 京の伝統野菜」の30年記念事業として「現代の京の伝統野菜のあり方を考える」を実施するなど多角的な展開を続けました。
コロナ禍での食文化発信
2020年、新型コロナウイルスが世界中に蔓延。国内外ともに観光客が消え、企業や団体の宴会なども消えました。そんな状況を踏まえ、同会がすぐさま立ち上げたのが、農林水産物の消費喚起を目的にした地元の旬の食材を使ったレシピ動画(「おうちで料亭ごはん」)の配信(2020年5月~21年3月)でした。緊急事態宣言やまん延防止措置の発令などを受けて多くの料理店が営業自粛や時短営業、酒類提供の自粛などを余儀なくされる厳しい状況ながらも、京料理の魅力を伝え、その技を生かして家庭の食卓を豊かにしてもらおうと考えたオンラインでのこの活動は、多くの共感を生むとともに、新たな時代の先進的な取り組みだったといえます。
その後も、新型コロナウイルス感染拡大が続いたが、同会では、食文化が多面的に発展してきたことを伝える親子向け事業「文化の結び」project(文化庁子供たちのための伝統文化の体験機会回復事業、2021~22年)を展開、翌年にも京料理親子文化体験事業を継続実施するなど、逆風が吹く中でも、未来を見据えた活動を続けています。
京都料理芽生会のあゆみ表
1955(昭和30)年 | 創立記念式典 |
---|---|
1959(昭和34)年 | 第1回三都芽生会 |
1967(昭和42)年 | 第14回全国芽生会京都大会 |
1970(昭和45)年 | 創立15周年記念式典 (老人ホームのお年寄りを招待) |
1978(昭和53)年 | 第25回全国芽生会連合会 |
1980(昭和55)年 | 創立25周年記念式典 |
1981(昭和56)年 | 第1回料理研究会 |
1985(昭和60)年 | 創立30周年記念式典 |
1986(昭和61)年 | 「復活させよう 京の伝統野菜」活動開始 |
1989年(平成元)年 | 食祭テイスティ京都89 「復活させよう 京の伝統野菜」京料理シンポジウム |
1990(平成2)年 | 創立35周年記念式典 |
1991(平成3)年 | 淡交社より「京野菜と料理」発刊 「京都料理芽生会35年のあゆみ」刊行 委員会制を導入 |
1992(平成4)年 | 第39回全国芽生会連合会京都大会 |
1994(平成6)年 | 建都1200年協賛事業 (グルメガイドブック「京・美味絢爛」発行) |
1995(平成7)年 | 創立40周年記念式典 阪神淡路大震災 義援金送付 |
1996(平成8)年 | 創立40周年記念「ビアフェスタ」 |
1998(平成10)年 | ぐるなび内にwebページ立ち上げ |
1999(平成11)年 | 全国料理業組合京都大会 |
2000(平成12)年 | 創立45周年記念「21世紀コトはじめ茶会」 |
2002(平成14)年 | 第1回日本料理フォーラム 京料理展示大会出品「名品に盛る」 総会で芽生会規約における会の目的の修正 |
2003(平成15)年 | 第1回東京料理講習会(料理研究委員会) |
2004(平成16)年 | JAL機内食の監修開始 |
2005(平成17)年 | 第1回京料理フォーラム 創立50周年記念式典 創立50周年記念-第100回京料理展示大会 芽生会ブース展示 |
2007(平成19)年 | 「京都市スチューデントシティ・ファイナンスパーク」ブース出展 京都料理学校での「夏休み 親子料理教室」 |
2009(平成21)年 | 日本料理チャリティフォーラム |
2010(平成22)年 | 創立55周年記念式典 第57回全国芽生会連合会 京都大会 平安神宮 薪能 京都造形芸術大学(現京都芸術大学)とのコラボレーション展示 |
2011(平成23)年 | 東日本大震災復興支援 絆プロジェクト料理の饗宴 |
2013(平成25)年 | 「あじわい館」での料理教室 「日本料理文化博覧会~和食の未来に向けて~」フォーラム |
2015(平成27)年 | 創立60周年記念「精進料理の世界へ」 |
2018(平成30)年 | 「文化としての食を考える」 ~「食」が文化に~ 法律化1周年記念事業 「復活させよう、京の伝統野菜」 30年記念 「現代の京の伝統野菜のあり方を考える」事業 |
2019(令和元)年 | 京都祇園花街「お茶屋と京料理・食文化にふれる」 |
2020(令和2)年 | 京料理・地元農林水産品 持続支援プロジェクト 『おうちで料亭ごはん』 |
2021(令和3)年 | 文化庁子供たちのための伝統文化の体験機会回復事業 「文化の結び」project |
2022(令和4)年 | 文化庁子供たちのための伝統文化の体験機会回復事業 京料理親子文化体験事業 |